軽食・保存食

カマンベール・ド・ノルマンディーとブリー・ド・モーの違い|白カビチーズの味と大きさで選ぶ|CM3719

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チーズ売り場に並ぶ、小さな丸いチーズと、白い皮に包まれた大きな三角形のチーズ。どちらも中は淡いクリーム色で、パンにのせたらよく合いそうです。

ところが、名前を見れば一方はカマンベール・ド・ノルマンディー、もう一方はブリー・ド・モー。同じ白カビチーズなのに、どこが違うのでしょう。

最初に押さえたいのは、大きさと生まれた土地、そして製法です。

味の説明では、乳の風味やキノコを思わせる香り、クリームやバター、ヘーゼルナッツにたとえられる香りが手がかりになります。選ぶときは、チーズの種類に加えて、いまどこまで熟成しているかを見ることが大切です。

二つの違いを知ることは、優劣を決めることではありません。食べる日、好みの食感、食卓に出す量に合った一切れを見つけるための、小さな地図になります。

まずは名前と大きさを見る|小さな円盤と大きな一輪

比べるのは、産地の名まで付いた二つのチーズ

今回は、一般的な「カマンベール」と「ブリー」全体を一括りにする比較ではありません。対象は、フランスの原産地呼称で保護された「Camembert de Normandie」と「Brie de Meaux」です。日本語では、それぞれカマンベール・ド・ノルマンディー、ブリー・ド・モーと表記します。

カマンベールという語は広く使われる一般名称になっていますが、カマンベール・ド・ノルマンディーは、産地と製法の条件を伴う名称です。

フランスの原産地・品質を扱う機関INAOも、この区別を説明しています。店頭では大きな商品名だけでなく、産地を含む名称と、赤と黄色のAOPマークを確認すると、今回の比較対象を探しやすくなります。

AOPはフランス語のAppellation d’origine protégéeの略で、原産地呼称保護を意味します。チーズの味を点数順に並べる印ではなく、どの土地とどのような生産条件に結び付いた製品かを示すものです。

日本製のカマンベールタイプや、殺菌乳を使った別の白カビチーズを否定する仕組みではありません。比較する範囲をそろえるための目印と考えると分かりやすいでしょう。

どちらも牛の未殺菌乳、フランス語でいう「lait cru」を原料とする軟質の白カビチーズです。「白カビ」は外側の皮の性質、「軟質」は内側のチーズの組織を表します。同じ分類でも、全く同じ味や食感になるわけではありません。

数字で比べると、売り場の形が理解できる

比較する点カマンベール・ド・ノルマンディーブリー・ド・モー
原料乳牛の未殺菌乳牛の未殺菌乳
分類軟質・白カビタイプ軟質・白カビタイプ
一輪の直径の目安約11cm36~37cm
一輪の重さの目安250g規模約3kg規模
売り場で出会いやすい姿木箱に入った小さな一輪大きな一輪から切ったくさび形
比較の入口になる香り乳、キノコなどクリーム、バター、ヘーゼルナッツなど

寸法や特徴は、INAOのカマンベール・ド・ノルマンディー案内、ブリー・ド・モー案内、および両チーズの生産者団体の資料をもとにしています。重さは売り場での一切れの重量ではなく、一輪を比べた目安です。

二つを直径だけで比べると、ブリー・ド・モーはカマンベール・ド・ノルマンディーのおよそ3倍強あります。大皿ほどの一輪を家庭で丸ごと買う必要はありません。店で見かける細長い三角形は、大きな円盤を中心から外周へ切り分けた姿です。

一方、小さな木箱のカマンベールは、その箱の中で一輪の形が完結しています。

この違いは、買い方にもつながります。小さな円盤を囲んで切り分けたいならカマンベールが分かりやすく、必要な量を量り売りで相談したいならブリーの一切れが候補になります。

とはいえ、取扱店によって販売単位は違います。二人で少しずつ味見をするなら、大きなチーズの方が買いにくいと決めず、カット重量を確かめてみましょう。

価格も、一箱と一切れをそのまま比較すると判断しにくくなります。

内容量が違うため、予算を考えるときは100g当たりの価格と、実際に買う総額を分けて見ます。高価な方が必ず好みに合うわけではなく、使い切れる量であることも選びやすさの一部です。

二つの土地と、乳を型に移す仕事

ノルマンディーの名を背負う小さなチーズ

カマンベール・ド・ノルマンディーの名称は、フランス北西部、オルヌ県のカマンベール村につながります。ただし、AOPの生産地域は村だけではありません。

ノルマンディーの複数の県にまたがる、定められた区域で作られています。「カマンベール村で作ったものだけ」という理解では、実際の産地の広がりを捉えられません。

このチーズを理解する手がかりは、草を育てる土地と酪農、そして乳を小さな形へまとめる仕事です。チーズは乳を固めたものですが、ただ液体を型に流し込むだけで完成するわけではありません。乳を凝固させてできるカードという柔らかい固まりを型へ移し、水分の一部であるホエーを排出して形を整えていきます。

カマンベール・ド・ノルマンディーでは、カードを複数回に分けて型へ入れる成形が特徴です。生産者団体による製造工程の説明では、5回に分けた投入が示されています。また、成形には手作業だけでなく機械による方式もあるため、「AOPなら必ず全工程が手作業」とは言えません。

何回にも分けるという説明からは、一度に押し固めるのではなく、カードの扱いと水分の抜け方を大切にする製法が見えてきます。

小さな木箱を開けたとき、その円盤の形を、単に携帯しやすいサイズとして眺めるだけでなく、乳から水分を抜いてまとめた仕事の結果として見ることもできます。

モーの市場から広がった、大きなブリー

ブリー・ド・モーの名にあるモーは、パリの北東に位置する町です。INAOは、農場で作られたブリーがモーの市場でパリの熟成業者へ売られ、19世紀初めには生産が東のムーズ方面にも広がったと説明しています。

現在の生産地域も、町の周囲だけに収まるものではありません。

ここで注目したいのが、作る仕事と熟成させる仕事のつながりです。乳を集めてチーズの形にする人がいて、それを受け取り、食べ頃へ育てる人がいる。

町の名前を持つチーズの背景には、農場と市場、さらに都市の食卓を結ぶ流通があります。チーズの産地名は、現在の製造所の住所だけでなく、こうした結び付きも考える入口になります。

ブリー・ド・モーの成形には「ペル・ア・ブリー」と呼ばれる専用の道具が使われます。平たいシャベル状の道具でカードをすくい、大きな型へ手作業で移す方法です。丸い深さのある道具を連想しやすいカマンベールとは、カードを扱う道具にも違いがあります。

ブリーの生産者団体の工程案内では、成形、水切り、塩を加える作業、熟成へと続く仕事が紹介されています。

ブリー・ド・モーの熟成は最低4週間で、団体が紹介する一般的な範囲は4~8週間です。ただし、売り場の食感を「何週間だから必ずこうなる」と機械的に決めることはできません。製造者や熟成の管理、販売までの状態にも目を向ける必要があります。

同じ「乳を固めて熟成する」チーズでも、どの土地で乳を集め、どの形に成形し、誰が食べ頃へ仕上げるかが違う。その違いが、小さな円盤と大きな一輪の向こうにあります。

片方をもう片方の大型版・小型版と考えるより、共通の仲間でありながら別の仕事を受け継ぐチーズと捉える方が、選ぶ楽しみが増します。

味の強さは名前だけで決まらない|熟成と買い方の読み解き方

香りの説明は「味の成分表」ではなく手がかり

カマンベール・ド・ノルマンディーには、乳の風味、軽い塩味、キノコや熟成庫を思わせる香りなどの表現が使われます。

ブリー・ド・モーでは、クリーム、バター、ヘーゼルナッツ、時に林床を思わせる香りが挙げられます。いずれも、そうした材料を混ぜているという意味ではありません。香りの印象を、身近なものにたとえた言葉です。

例えば「ヘーゼルナッツの香り」と書かれていても、ナッツ入りチーズを想像する必要はありません。実際の原材料やアレルゲンは商品表示で確認します。風味の紹介と原材料表示を分けて読むことで、チーズの説明がずっと分かりやすくなります。

また、「濃厚」という一語の中には、塩味の強さ、香りの強さ、舌に残る感覚、柔らかさなど、別々の印象が混ざりがちです。香りは穏やかでも口当たりが豊かに感じられる場合があり、柔らかくても好みの香りではない場合があります。

はじめて買うときには、「濃厚なものを」と頼むより、「香りは穏やかで、中心まで柔らかいものを」と伝える方が、求める状態を共有しやすくなります。

白い芯と柔らかい部分を見てみる

白カビタイプの熟成を考えるとき、断面は大きな手がかりです。カマンベール生産者のデュランは、外側から内側へ熟成が進み、若い段階には中心に白くチョーク状の芯が残ると説明しています。

この白い芯は、焼き菓子の生焼けのような意味ではありません。熟成段階による状態の一つです。芯のある食感を好むか、中心までしなやかな口当たりを好むかによって、選ぶものが変わります。食べ頃は一つの点ではなく、好みと結び付いていると考えるとよいでしょう。

ブリー・ド・モーも、熟成が進んだものでは内側が柔らかくなります。切り売りでは断面を見られることがあるので、中心の白い部分と周囲の色や質感を見比べられます。ただし、写真だけで硬さや香りを正確に判定することはできません。

通信販売なら、熟成状態の説明や、食べたい日を伝えられるかも選ぶ材料になります。

ここで避けたいのは、たまたま若いカマンベールと、よく熟成したブリーを食べて、「カマンベールは硬く、ブリーは柔らかい」と種類全体の違いにしてしまうことです。逆の組み合わせなら、印象も変わり得ます。二つの種類の比較と、熟成段階の比較は、分けて考えましょう。

店で相談するときは、三つのことを伝える

チーズの専門用語をたくさん覚える必要はありません。「いつ食べるか」「どんな香りや食感が好きか」「どれだけ必要か」の三つを伝えると、候補を絞りやすくなります。

食べたい場面・好み相談の言い方の例確認する点
初めてで香りが心配香りが穏やかな状態を少量ずつ種類に加え、現在の熟成状態
柔らかな食感を楽しみたい中心までしなやかなものを今日食べたい芯の残り方、販売者の食べ頃案内
二つを公平に食べ比べたいできるだけ近い熟成状態でそろえたい片方だけ極端に若くないか
小さな会食で切り分けたい人数に合う量で、一輪かカットか相談したい総重量と残った分の扱い

この表は銘柄の順位表ではなく、買い物のための相談例です。例えば「初心者にはブリー」と種類だけを指定しても、よく熟成した一切れなら香りが強く感じられるかもしれません。

逆に、カマンベールに苦手意識がある人でも、別の熟成状態なら違う印象を持つ可能性があります。

一度気に入ったら、名称だけでなく製造者、購入店、食べたときの断面の状態もメモしておくと、次の相談が具体的になります。

「あのカマンベールがおいしかった」から、「前回は中心に少し芯があるものが好みだった」へ。自分の言葉が増えるほど、選ぶための基準も育っていきます。

熟成の楽しみと、保存の安全は別に考える

どちらも未殺菌乳を使うチーズなので、食べる人に合わせた注意が必要です。

妊娠中の方、高齢の方、免疫機能が低下している方は、加熱せずに食べることを避けるなど、公的機関の案内に沿って選んでください。フランス農業省は、幼い子ども、とくに5歳未満についても未殺菌乳のチーズを避けるよう案内しています。

厚生労働省は、リステリアが冷蔵庫内でも増殖できること、食品は期限内に、開封後は速やかに食べることを説明しています。購入後は製品に表示された温度と保存方法を守り、食べる分だけを取り分けましょう。

香りを楽しむために食卓へ出すことと、室温で長期間保存することは全く別です。

家庭の冷蔵庫を、温度や湿度を管理する専門の熟成庫と同じようには扱えません。「よく熟成したものを食べたい」場合は、まず店でその状態のものを相談する方法が確実です。期限を越えて待ったり、異変のあるものを熟成の個性だと自己判断したりしないでください。

食品安全については、厚生労働省「リステリアによる食中毒」と、フランス農業省のブリー案内にある注意事項を参照してください。

まとめ|同じ条件で少しずつ食べ、自分の選ぶ基準をつくる

最初の一口を比べやすくする、小さな食卓

二つを食べ比べるなら、最初は味の強い付け合わせを増やさず、同じパンと水を用意する方法が分かりやすいでしょう。

片方だけ蜂蜜をかけたり、もう片方だけ強い香りのパンにのせたりすると、チーズ自体と組み合わせの違いが重なります。まず同じ条件で少量ずつ、そのあと好みの組み合わせへ進むという提案です。

切り分けるときも、中心の部分と皮の近くの部分が一緒に入るようにすると、場所による違いを含めて味わえます。

カマンベールなら中心から放射状に、ブリーの長い一切れなら先端ばかりを取り尽くさず、全員に内側と外側が渡る切り方を考えてみてください。厳格な作法を覚えるというより、比べる条件をそろえる工夫です。

順番は、名前で固定する必要はありません。その日に用意したもののうち、香りが穏やかに感じられる方から味わうと、後の一口と比較しやすくなります。

香り、硬さ、口に残る感じを別々に言葉にしてみると、「おいしい」「強い」だけでは見えなかった好みが分かってきます。そのままで違いを確かめたら、次の一口に果物を添えるのもよいでしょう。デュランはカマンベールにリンゴや洋ナシを合わせる提案をしています。

食べ比べでは、同じ果物を両方に少しずつ添えてみても構いません。これは家庭で楽しむための提案で、二つの産地に共通する決まり事ではありません。

名前、大きさ、熟成を別々に見ると選びやすい

カマンベール・ド・ノルマンディーとブリー・ド・モーの違いには、比較的はっきり示せる部分があります。名称に結び付く土地、一輪の大きさ、成形の仕事などです。

一方、味の強さと口当たりは、製造者や熟成状態も含めて確かめたい部分です。この二つを分けることが、選び方の中心になります。

小さな一輪を切り分ける楽しさから選んでも、大きなブリーの一切れを必要な量だけ買うところから始めても構いません。乳の香り、クリームを思わせる口当たり、皮の近くと中心の食感。そのどれに心が動いたかを覚えておけば、次に店で尋ねたいことが自然に見つかります。

二つを見分けるために覚えるのは、「どちらが上か」ではなく、「今日はどんなものを食べたいか」です。

産地まで含む名前を確かめ、食べる日と好みを伝え、無理なく食べ切れる量を選ぶ。白い皮に包まれたよく似たチーズは、その順番で選ぶと、別々の表情を持つ食べ物として食卓に並びます。

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